牛首紬の深イイ話

牛首紬の深い話と最新情報

牛首紬を生産しているのは、白山工房と加藤機業場の2か所だけです。

牛首紬の生産量は、公表されていないのではっきり分かりませんが、
関係者に聞いた話ですと白山工房で年間2000反位、
加藤機業場で年間200反位ということです。

白山工房と西山機業場では10倍位の差があるようですね。

なぜそんなに生産量が違うのか?

  • 生産する場所の広さや従業員の数など規模が違うこと
  • 昔ながらの手作りにこだわっている加藤機業場
  • 近代化や先染めや草木染など新しい牛首にチャレンジしている西山産業

会社の生い立ちが大きく関係していると思います。

加藤織業場 改石牛首紬

加藤機業場は、絶滅寸前の牛首紬をたった一人で織りつづけて、
伝統技術を守ったと言われ、
黄綬褒章を受賞した「加藤志ゆん」さんの息子さん「加藤改石さん」が現役で頑張っています。

今でもお母様の意思を重んじて、全て、昔と同じ手作業で行っています。
生産量より品質を落とさずにいかに良い物を作っていくか?
そこに力をいれている加藤改石さんは、
昔と同じように白生地のみ作っています。

加藤機業場の牛首紬は、
加藤さんの名前をとって「改石牛首紬」とも呼ばれています。

出展:角印・牛首紬

出展:角印・牛首紬

西山産業 白山工房

西山産業は、昭和49年、牛首村が沈んだ年に今の場所に移り、会社を設立しました。
その時から本格的に牛首紬を生産しています。
その後、ダムに沈んだ村の貴重な紬を言うことで脚光を浴び、驚くほどブームになりました。
西山産業は時代の波にうまく乗ったという感じですね。

でも、決して商売人ではなく、牛首を愛している方です。
後世にもこの素晴らしい技術を伝え残したい、そういう思いを持った方です。

ですから、白山工房は近代化、合理化に向かっています。
一部ですが、最終工程の機織りで機械織りもあリます。

しかし、その生地は、手織りと全く遜色ない出来になっています。
最近では、パリやミラノなどヨーロッパに洋服の生地として売り込んでいます。
それは、着物を諦めたのではなく、牛首紬の技術を守るためだと思います。

西山さんは、昔ながらの牛首紬にとらわれず、
新しい時代に合う牛首紬を探求しています。

出展:角印・牛首紬

出展:角印・牛首紬

同じ牛首紬でも思いや技術が全く違いますね。
どちらも素晴らしい牛首紬ですよ。

2ヶ所の牛首紬の生地は違うのか

生地の見た目と肌触りが少し違います。

「白山工房」の製品はサラリというか少しツルッというような風合いです。
先ほど機械織りもあると言いましたが、証紙を見て初めて分かるくらい差が無いです。

単なるコストダウンではなく、
機械織りでも手織りと変わらない着心地の着物を作る努力を感じました。
また、白山工房は、先染めの縞柄、先染めの無地もあリます。

先染めは、後染めの牛首と違い、生地がしっかりして地厚です。
後染めの牛首とお持ちの方は、2枚目の牛首にどうでしょうか?

「加藤機業場」の製品は玉繭の節が多めです。
並べると違いが分かります。また、触った感じも少し地厚でふんわりした感じですね。
加藤機業場の牛首は全て白生地です。

一緒に触ると違いが分かります。

機械織りの白山紬と機械織りの牛首紬の違い

同じ機械織りでも牛首紬と白山紬とは全く違います。

機械織り牛首紬

牛首紬は、機械織りでも織以外の工程は全て手作業なので、牛首紬です。

玉繭の延べ引き、糸はたき、この一番大事な作業は、手織りも機械織りも同じです。
実際に、値段は機械織りも手織りも変わらないです。
(コストは変わるのでしょうが、売り場では同じ値段で売っています)

白山紬

白山紬は、30年以上前からありました。
牛首紬の廉価版という感じですが、生地は全く違います。

  • 生地が薄くてペラペラした感じです。
  • 生地が張っている感じです。
  • 節が目立たなく、ツルッとしています。

最近白山紬の単品は見なくなりましたね。
たまに京友禅や加賀友禅の作家さんが使っていますね。

牛首紬の最新情報

今回の展示会では、牛首紬が200点位ありましたが、全て白山工房です。
問屋さんの事情かもしれませんが、最近、加藤機業場の牛首紬は見てないですね。

でも、白山工房の商品なので先染めの縞柄もあリましたよ。
鰹縞(カツオジマ)が良かったですね。

訪問着では、ダンマル染めがありましたね。

ダンマル染めは、蝋纈(ろうけつ)染めと似たような染めです。

ダンマルとは、樹脂・ヤニというマレー語のダマールが日本語化したものです。
その樹脂を揮発油で溶いたものを防染に使います。
臈纈染めに似ていますが、完全に防染できずにボカしたようになります。

普通の訪問着や小紋でも使われる技法ですが、牛首紬では初めて見ました。

墨黒の地に葡萄唐草の柄でとてもステキでしたね。

今回は、牛首紬の袋帯、名古屋帯も数多くありました、
昔は、金箔を使用した帯が多かったですが、
最近は、純粋に染めの帯が多いですね。

柄も、モダンな柄が増えたような気がしますね。

牛首紬の真実

釘抜き紬を言われていますが、釘は抜けないですよね。
釘に引っ掛かったら、生地が裂けますね。

それほど強い生地という事で釘抜き紬と呼ばれていると思いますが、
ちょっと大げさですよね。

私は、生地の強さより、着ていて体になじむ着心地の良さが牛首の良いとこだと思います。

大島よりも柔らかく、結城よりもしなやか、
後染めなので、セミフォーマルの場でもOKですね。

結婚式の披露宴なら、全く問題ないですよね。

生地に上品な光沢があり、(大島の横惣のようなテカテカした光沢ではない)高級感がある。

紬をきていると気がつく人は、よほど着物通の方だけ

15年位前に、白山工房にお伺いしました

15年くらい前白山工房に行きました。

車で金沢をスタートし、白山比咩神社そばの「りんどう」で昼食を済ませ
牛首村が沈んだ手取りダムを通って白山工房に行きました。

りんどうで食べた岩魚の踊り串は、頭から丸かぶり骨まで美味しくいただきました。

白山工房は当時も見学できる施設があって、
そこで全工程を見せていただき、最後に西山さんからお話を聞きました

西山さんのお話し

牛首を守っていきたいという熱意を感じました。
牛首紬は当時今以上に人気がありましたが、
生産数が少ないので、人気があったもなかなか買う事が出来ない時代でしたね。

そんな理由もあり機械織りの白山紬も市場に出回っていました。

素人の方で、牛首を見たことがない方は見分けがつきません。
それを良いことに、牛首紬のようなトークで販売していたお店もあったようです。

そんなこともあり、西山さんは本物を守っていきたいと
強くおっしゃっていたのを思い出します。

私自身も牛首は先染めの男物を一枚持っています。

個人的には、先染めの牛首は生地がしっかりしているので好きですね。

後染めのようなりんずのような柔らかさはあまり感じませんが、
しっかりと織られて、後染めよりも多少地厚に感じます。
丈夫で着やすい着物ですね。
後染めは、多少生地が痩せて薄くなりますが、その分しなやかになるのかもしれません。

牛首紬は、きものファンにとって一枚欲しい着物ですね。

何か質問や疑問があればお問合せくださいね。